過去記事アーカイブ

2006年2月から最近までのエントリーが全て格納してあります。
お時間のあるときに時々覗いてやってください。

誰似?(3)


 
 
 

本日のお話は昨日の続きです。

 
  
  

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おふくろは、市役所に勤めていた。

毎朝ぼくを見送ってくれるのは、おばあちゃんだった。

帰ってくると、家はいつも留守だった。

どうしても寂しい時は、畑にいるおばあちゃんの所まで行った。

 

 

子どものために有給休暇を取りにくい時代だったので

参観日も運動会も学芸会も

来てくれるのは、いつもおばあちゃんだった。

 

 

それでも、おふくろの言いつけを守り

学校での成績はよかった。

6年生では生徒会長もつとめた。

 

 

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ほしいおもちゃ(めんこなど)やお菓子は

いつもおばさんが買ってくれた。

 

 

父親がいない不憫さは、やはり何も感じていなかった。

ただ、おふくろと自分の名字が違うのは面倒くさかった。

おふくろは離婚後、旧姓の「抹茶」に戻したが

ぼくの名字は父親の「バニラ」の姓のままだった。

母方と一緒に住んでいたが、戸籍は父方だった。

 

 

おそらくおふくろは、幼児期を過ぎたら

ぼくを父に返すつもりだったかもしれない。

父方は、地元ではそこそこの資産家でぼくはそこの長男になる。

幼いうちでは、どちらにつきたいか判断できないだろうと

成長を待って決めさせるつもりでいたらしい。

 

 

しかし、ここがまた複雑なことに

ぼくの父親は、おふくろと再婚だった。

実はぼくには腹違いの3人の姉がいるらしい。

前妻はその3姉妹の末っ子だけをつれた離婚したらしく

おふくろは、結婚と同時に2児の母親になっていた。

 

 

結局、その結婚生活も破綻し父親の元には前妻の2人の娘だけが残った。

 

 

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その後、ぼくは父親のいるいないに関わらず

思春期を迎え、反抗期に入った。

小学校まで優秀だった成績もどんどん落ちていった。

 

 

 

何度も言うが、ぼくは父親を必要とはしなかった。

しかし、おふくろは必要と感じたのだろう。

 

 

 

 

 

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父親は、となりの市で高校の英語の教師をしていた。

公立の進学校だった。

いけない高校でもなかった。

 

 

 

でも、そんなの関係ねぇ!だった。

 

 

 

結局、ぼくは地元の高校にすすみ

母親とはどんどんすれ違って行った。

相変わらず母親は不在で

おばあちゃんの作ったご飯を食べて

おばさんからおこづかいをもらって過ごしていた。

 

 

 

厳しい母親には、反感を持っていたが

おばあちゃんやおばさんとはうまくやっていた(…と、思う。)

 

 

 

そんなある日、部活の地区大会の試合会場で

去年の担任に会った。

 

 

 

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その時の自分の心理状態は、はっきり覚えていないが

おそらく高木先生を驚かせるぐらいの

軽い気持ちで言ったと思う。

 

 

 

「K高校で英語を教えているバニラ先生は

ぼくの父親なんですよ。」

 

 

後にも先にも、父親の存在を認めたのは

この時が初めてだったと思う。

口にした後、急激に汗がでた。

 

 

 

しかし、高木先生の反応は自分のイメージと違っていた。

 

 

「あれ?バニラ先生には

2人の娘さんがいるだけと

聞いていたけど…」

 

 

 

 

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はずかしいやら、情けないやら、みっともないやらで

その後のことは、あまり覚えていない。

 

 

やはり、自分には父親はいなかった。

そう確認しただけだった。

涙なんかでなかった。

 

 

 

自分が父親に1番近づいて1番遠ざかった瞬間だった。

 

 

 

(つづく)









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誰似?(3) への40件のコメント

  1. うわっ。。
    状況を一瞬で把握したご主人の「??、!!」を思ったら、胸が苦しくなったです。。。

    ルート66 投稿:
  2. もう 鼻がツ~ンとして 何も書けません・・・

    匿名 投稿:
  3. 乗り越えたから書いてるんですよね・・・

  4. ものすごく引き込まれて読んでしまいました。
    クリームさんのその後…続きが気になります。

    あやぞ 投稿:
  5. うえん。とっても読んでいて苦しくなりました。

  6. その瞬間のクリーム少年の気持ちを思うと・・・・言葉がでない。

    さち 投稿:
  7. おばあちゃんにおばさんにお義母さん、みんながいたからこそ、父親のいない不憫さは感じなかったんでしょうね。
    高木先生の反応で一瞬色々な事が脳裏を駆け巡ったのでしょうね。
    読んでいて何とも言えない気持ちになります。

    ぴよぴよ 投稿:
  8. ・・・終わりよければすべてよし!・・・
    自分に言い聞かせながら、続きを待ってます。(涙)
    ファッジさん、明日は日曜ですが休まないで~!!

  9. はじめまして。
    いつも楽しみに、拝見させていただいています。
    今回は、胸が苦しくなります・・・。
    ですが続きが気になります・・・。
    私も、休まないで欲しいです~。

  10. バニラ家のめっさ込み入った事情を、あえて「絵日記」で書き切る、って・・・。スゴ!
    この連載は、ファッジさんの「新たなステージ」ですね。
    ( ノ^∀^) よっ! 
    絵日記ブログ界の山崎豊子!

  11. クリーム君~・・・・・
    なんかせつないです(涙)

  12. 子供さんにとっても親御さんにとっても波乱万丈の人生行路だったんですね。特に子供さんの場合には選択の余地がありませんからね。お義母さんのこれまでの厳しい言動がなんとなく受容できるようになってまいりました。まさに人に歴史ありです。

  13. クリームクン、相当辛かった瞬間だったんでしょう。
    マジ泣きしそうです・・・

    くじゃく 投稿:
  14. やだ、涙が出てきた。

  15. ご主人にとっては、
    お義母さんが父親的存在だったみたいですね。
    自分の存在を否定されたような
    その時のクリームくんの気持ちを思うと
    切なくなりますが
    別れた父親なんてそんなもんだろうなぁ・・・
    父親は「居ない」と子供達に話している私は
    そう思ってしまいます。

  16. 胸に刺さる一言ですね。先生は何の気なしに言ったのでしょうけど・・・・
    なんだかその時のクリームさんのことを思うとせつない気持ちになります。
    そしてどうなったのか・・明日が楽しみにしてます。

  17. 今回のお話はとても興味深く読ませて頂いています、しかし、胸が痛いです。
    私の場合父親がいなかったら・・・今の自分では無いと思います。

    チョビ 投稿:
  18. 旦那様が。子育てに参加できない理由ですね。
    子供を育ててみてわかりました。
    自分がしてもらった通りにしか
    子供にしてあげられないな・・って。
    でも,それを乗り越えて
    一生懸命子供と関わろうとする旦那様,ステキですね。

  19. クリームさんの気持ちが切ないです

  20. 旦那様のその時の気持ち…
    考えると、胸が、心が苦しくなってきました。
    続きを待っています。

  21. 読んで涙がでました。
    そして、
    自分の子供の頃を思い出しました。
    私は日課のように父から殴る蹴るの虐待を受けていました。
    中学校の頃殴られて家具で頭を打ち、自分は本当に死ぬのでは、と思った時、とても気持ちが楽になりました。
    この鼻血にまみれ過呼吸で息のできない日々に、終わりが来ると思ったからです。結局生き残りましたが。
    家は裕福で父はエリートといわれる職業でした。
    父がそばにいても、そばにいなくても、辛い思いをする子供たちがいっぱいいるんですね。

  22. クリームさんが息子さんと娘さんと大切にされている理由がわかったような気がします(涙)。
    続き……待ってます!

    ロン 投稿:
  23. 今更ですが、ファッジさんのイラストは本当に素敵です。
    >>涙なんかでなかった。
    この気持ち…とても良く分かります、わたし。
    続きを待っています。

  24. 私も 一度だけ写真でしか見たことのない実父。
    娘の私を思い出すことあったのかな
    クリームくんの 気持が せつない・・・

    ちるる 投稿:
  25. 引きずってないと思ってた自分だけど
    案外引きずってた部分がどうしてもあるよね。
    彼はその瞬間ふっきれたと思います。
    人間・・愛されない悲しさってありますが
    彼は知ったのよね・・
    だから、彼は我が子を愛してやまないと思います私も人を愛そうと思います。

    匿名希望 投稿:
  26. せつなくて言葉が出ません。
    読んでてこんなにつらくてでもひきこまれる日記ははじめてです。

  27. だんなさんの話
    ものすごく引き込まれますね

    斉藤一 投稿:
  28. クリーム氏のお父さんとお母さんは短くても結婚されていたので状況は違いますが、うちの旦那にも前妻との間に自分の手で育てた娘二人以外に男の子が一人いて、娘二人が大きくなるまでは、タブーな話題だったようです。その男の子は残念ながらちょっと陰のある子に育ってしまったので、そういう生い立ちも影響してるのかなーと。
    クリームさんは女家族の愛情を一心に受けて、まっすぐ育ってよかったですね!

    ぽん 投稿:
  29. でも今は6人の家族に囲まれて幸せですね。
    家族の事を真剣にそして、
    時にはユーモラスに考えてくれる
    素敵なバニラさんに
    こんなに切ない過去があったとは・・涙です。

  30. 涙でました。なんの涙だろ。
    頑張ってたクリームさんになのかな…。
    なんとなく、クリームさんがファッジさんを愛する理由が垣間見えたような。
    お義母さまの厳しさの理由も垣間見えたような。
    いつも読ませていただいていて、ファッジさんを取り巻くご家族のファンです。
    ポイントをつくクリームさんの優しさは、心の機微を深く知っていらっしゃるからなのでしょうか。勝手な思い込みかもしれませんが、昨日、今日の記事でふとそんな気がしました。

  31. 初めて父親のことを口にしたときのこと・・・
    クリームくんの「急に汗が出た」心境の複雑さ、想像するにあまるものがありますね。そこにはやっぱり期待感があったのだと思います。
    私はそれに加えて、お母さんの気持ちも考えてしまいますね。仕事をしていて、息子のそばにあまりいてやれない、そして離婚した父親と息子の間をとりもつとき、お母さんは父親役と母親役を一緒にやっていくことの難しさをきっと感じていたはず。
    状況は違いますが、私の父親は後妻の息子で、母親は幼かった父を置いて家を出、父はお姉さんに育てられました。私が物心つくころには、父は母親と連絡をとっていました。そのとき、父はどんな気持ちだったのかなと考えてしまいました。

  32. なんか涙が出そう・・・。
    クリームくんが可哀想に思えて来ちゃう。
    続きが気になります~!

    sakura 投稿:
  33. 涙が出ました。
    自分の感じた気持ちではありますが、
    そんなの哀しいな、
    寂しいなと感じました。
    でもでも辛い気持ちが多いほど
    優しい人になれるのかもしれません。

  34. ファッジさん 本が 届きました 特に 「子育ての詩」が 読みたくて 読みたくて 携帯にどんなに 張り付いてみたか 私もファッジさんみたいな 素敵な お母さんに なりたいです

    なな 投稿:
  35. たくさんのコメントありがとうございました!
    みなさんからのコメントを読むにつれ、本当にひとり一人違う人生があることを痛感します。
    ダンナの生い立ちと私の生い立ちももちろん全然違いますが、こうして共有することで家族になれるんだと思います。
    まだまだ、これからどんなことが起こるかわからないのが人生ですが、一緒に歩いて行く約束をしたので、このままこの調子でこれからもやっていきますよ。
    え〜と、続きは月曜日になると思います。
    もうしばらくお待ちください。

  36. ・・・胸が痛くなりました。
    クリームさんのお父さんの意見がないので
    クリームさんのお父さんの本当の気持ちはわかりませんが・・・
    でもいつもBlogを見ていてるから思うだけですが
    クリームさんは素直に子供さん達を
    愛してらっしゃることを
    すばらしいなぁと感じます。

  37. ああ。。。。
    多感な時期に、それはないです。。。。
    きゅーんときてしまいました。

    らら 投稿:
  38. 高木先生、それはないよ・・・・
    軽い気持ちでしょうが、前年担任だったら
    家庭の事情はある程度知っていたでしょう?
    言わなくても良いことじゃないか!
    でも、クリームさんが、それだけ翳を見せない、しっかりした生徒だったのかな

    futakaji 投稿:
  39. すごい胸が痛いです。。。
    旦那さんのその時の気持ちを思うと
    切なくて読み終わって体が硬直して
    しまいました。

    美咲 投稿:
  40. 切ないです・・・。